セ・カマラ現る

Akjoujtで見かけた巨大ケージのことがどうしても忘れられないの。


挨拶程度しか言葉は交わしてないのに。


目を閉じると臆千の星
一番光ってるのが彼なの。




彼のことを考えると喉が交通規制しちゃってご飯も通らないの。

四六時中、彼のこと。
食前食後も、彼のこと。
寝ても冷めても、彼のこと。


ふぅ。

どうしちゃったんだろう。わたし。熱でもあるのかな。


コウタロウはちょっと冷めたレモンティーの最後の一口をすすった。
カップを置いた瞬間、脳裏をある言葉が走った。




え、ちょっと待って。


もしかして、これって、、、、



コウタロウはベッドに横たわり、顔を枕にうずめ、足をバタバタさせた。


もうダメ。ガマンできない!!


居ても立ってもいられなくなって、所長さんに上目遣いでお願いしてみたら、
首都の研究所に持ってこれることに。



やったわ!ナイス勇気よ。わたし。



勇気。



それは、一歩を踏み出すために必要なもの。


今、何か悩んでいる君も、胸に秘めたる勇気を振り絞り、


その一歩を踏み出してみないか?


きっと今まで見えなかった新しい世界が見えるはず。。。








はい。ということで巨大ケージを使わせてもらえることになったのです。


バッタ研究者にとってケージの数や大きさは己の力を誇示するためのステータス。
オスゴリラが胸を叩いて胸板の厚さをアピるのと一緒なのです。


ただ、御神体とでも言うべき巨大ケージを持ってくるとなったらAkjoujitの職員達が黙っちゃいないはず。
このままでは衝突は避けられない。
職員一揆を懸念し、プレゼントで誤魔化す作戦を決行することに。


チビっ子達にはお菓子を、
職員にはフルーツの盛り合わせを、
将来には夢と希望を、

それぞれ準備した。


ゲストハウスでコーヒー飲みながら一息ついてたら、
突如、ティジャニが窓に向かって大声で叫びだした。


大人げも無く興奮したティジャニ(自称、37歳)は、


「セ・カマラがそこにいるぞ!」
と。

え?まぢで?


逃すわけにはいかないっしょ。
無理やりゲストハウスに連れ込み、コーヒーを差し出す。


噂にたがわずのんびりした口調でおっとりした感じのセ・カマラ。


自己紹介もかねて小話をして、ちょうど今、Akjoujtにケージをとりにいくことを説明したら、
セ・カマラはAkjoujt研究所の最高責任者だということが発覚。
大ボスにも了承を得た。



テーブルにあった山盛りのお菓子を見て、自分がかなりのお菓子好きだと勘違いされてしまったので、
チビっ子達にあげるために買った旨説明すると、

「あ“ぁーーー あの子供だちはぁーーーーーー  わたしのぉーーーー 子供だよーー」



えーーーーーー!! ジュニアだったの!?


セ・カマラは自分の子供がかわいがられでらの、すげー喜んでだ。



思わぬ形でチームに引きこむのに絶好のスタートを切れた。
しかし、まだだ。
彼の心を掴むには早い。



ここは「三願の礼」といくか。


時は戦国、三国志時代。
人材を求める劉備元徳は智謀に長けた学者である諸葛亮孔明を引きこむために、3度諸葛亮の家に足を運び、やっと参謀として迎えることができたという。
これを「三願の礼」という。


自分にとってセ・カマラは正に孔明そのもの。
自分も劉備に習い、3回セ・カマラのお宅に遊びにいくしかない。


そして、2回は門前払いをくらい、3回目でようやくお宅にあがって礼をアピールするのだ。




しかし、問題なのは、














「セ・カマラの家に行くのがめんどくさいし、2回門前払いをくらう意味がわからない」




ということだ。
もし1回目でお宅にあがることになったら、どうしたらいいのか分からない。




自称、バッタ界の劉備元徳
悩みぬいた結果、逆に自分の家に来て貰うことに。



次の日、さっそくゲストハウスに招待し、昼食会を企画した。

あぁ そうだよ。飯で釣る作戦ですけど?何か?


スペシャルランチをレストランで作ってもらって準備したのだが、
ティジャニが、

「あー これうちらが作ったんだよ。うちらの料理すごいでしょ」
とセ・カマラになぜか嘘をついた。


「え“ぇぇ ティジャニとコウタロウはコックさんだなー」

と、ゆっくり驚くセ・カマラ。
ティジャニのいたずらが、もてなし度アップに繋がる。

飯を食いながら色々話をしていたら、
3回もてなすまでもなく、セ・カマラが快く自分のプロジェクトに加わってくれることに。



色々と質問したのだが、セ・カマラの知識がパない。

(注:親へ。「パない」っていうのは「ハンパがない」を略したもので、「ものすごい」って意味だから)



モーリタニア中のバッタ情報に精通し、且つ植物や他の動物に関する知識にも長けている。
自分の耳の構造を疑いたくなるような興味深い話もしてくれた。



まさにバッタ界の孔明


伝説は生きていた。


伝説は生きていたのだ。




その伝説人と同じ時代に、同じ場所で共に研究できることに感謝したい。




運命が今、バッタ界の歴史を大きく変えようとしている。




君よ。歴史の証人となれ。