に参加してきた。
アフリカ各国のサバクトビバッタの専門機関の長が年に一度集結し、一年の活動報告と、
次年度の戦略を話し合うのが目的だ。
今年はたまたまモーリタニアで開催されたので参加してきた。
(右下のバッタはアフリカのサバクトビバッタ研究機関を総括する最高機関のロゴ)
参加国
チュニジア
セネガル
リビア
ブルキナファッソ
アルジェリア
モロッコ
マリ
ニジェール
チャド
モーリタニア(自分はモーリタニアに含まれる)
そして、在モーリタニア日本大使の東大使にも参席していただいた。
会が始まる前に
チュニジアの長に自分の研究所の所長のババさんが、
「こちら、日本からきた優秀な研究者のKoutaro Ould Maenoです」
と紹介してくれた。
うん。所長の中では「Ould」はすでに確定している感じだね。
先日、モーリタニア最高敬意あるミドルネーム「Ould」を名乗るがよいと許しを得たのだが、親からもらった名前を勝手に変えるわけにはいかないので念のため相談したら、
「お〜、名前もモーリタニア風に変えるのはグッドアイデアでしょ。」
と快諾されていた(笑)
予想外だったのだが、会議は全てフランス語だった。
英語でなくて驚いた。
とりあえず、会議の内容はほぼ分からないだろうが、スライドでなんとか予測できるだろうと思っていた。
今回も会のはじめに自己紹介大会が始まり、各国の長がテンポよく自己紹介していく。
自分も腹をくくり、
「日本人のKoutaro Ould Maenoです。研究者やってます。」
と、ツッコミどころを加えて自己紹介したら、会場がざわついた。
すぐに所長さんが付け足しで説明してくれたら、会場が大笑いしていた。
見たか!うちらのコンビプレイを。
その後で、各々のプロフィールを回し書きする一枚の紙が回ってきたので、
「Koutaro Ould Maeno」
と記入し、隣に座ってる所長さんに渡したら、
それに気づいた瞬間、ハっとこっちを見て
「コウタロー」
と、ボソッとつぶやき、満面の笑みを浮かべてうなずいてきた。
自分も所長を見つめ、無言でうなずき返した。
研究者が名前を途中で変えると論文検索するときに支障をきたすと聞いたことがあったので、
婿養子になって苗字かえるのはイヤだなぁと思っていたのだけど、
モーリタニア人も憧れる「Ould」を名乗ってバッタ研究できるなら本望でしょ。
何より、ネタ的にオイシイ。
あ、あらためまして、皆さんこんにちは。
本日、改名しましたKoutaro Ould Maenoです。
「オウルド」よりは「ウルドゥ」に近い発音ッス。
会は綿密なスケジュールが組まれており、アフリカのバッタ研究機関の大ボスが、まず現在抱える問題を30分で紹介し、各国15分ずつプレゼンテーションをして、
その後で論議する流れになっていたのだが、
「今は各国のプレゼンテーションは重要ではない」
ということになり、重要なことがあったら手を挙げて述べよ、という流れになり全演題キャンセルに。
スライドが見れない・・・・
重要なことをでかい紙に司会が書き、ひたすら討論することに。
時に激しく、時に切なく会が進む。
所長さんに通訳してもらったら、バッタ防除に必要なバッタ職人の人材育成が急務だそうだ。
どの国がどんな職人を何人育てたのか書かれた書類が回ってきた。
職人種別としては、
・殺虫剤撒き職人
・殺虫剤管理職人
・環境をいたわる職人
・バッタの発生量を調査する職人
など10種類ほどおり、何日トレーニングを受けたのかも詳細に調べられていた。
2年前までは各研究所の職員が自分のワーカー達に指導していたのだが、
今は「バッタ職人育成マスター」なる専門の人が指導しているらしい。
マスターになるためには厳しい試練が待ち受けているそうだが、
先日登場したセ・カマラもマスターだそうだ。
どのくらいの日数をかければ、職人として十分な能力を得られるのかが議論にあがったが、各国でワーカーの「理解度」が異なるから、一様にするのは難しいということになり、各国自己申告制になった。
昼食会後、一番若いアルジェリアの次期長に話を聞いた。
「アルジェリアでは最近、バッタが常に発生しているところから5kmのとこに新しい研究所を立てたんだぜ。お前もそのうち遊びにこいよ。最高だぜ」
と誘惑された。
彼はアルジェリアの一世紀に渡るバッタの発生状況を細かく調べあげたり、100万キロ近く動き回って各地のバッタの情報をかき集め、学位をとったそうだ。
アルジェリアは横幅が2000kmあるそうなのだが、移動は飛行機を使わず車使うそうだ。
車だと2,3日かかるが、バッタの生息地を間近で見ながら移動することが重要だそうだ。
この人もバッタ研究に対する姿勢が違う。
彼曰く、
「バッタの研究はほとんどが実験室内で行われているが、実験室の成果を野外のバッタにそのまま当てはめることは不可能だ。
実験室と野外とではバッタの顔は全然違うから、リアルのバッタを野外で調査する以外バッタ問題を解決することはできない。
もちろんアフリカの野外でもバッタは研究されているが、皆が行くつく答えはいつも同じだ。
防除は不可能だと・・・と。
ただし、それでも我々は研究しなければならない。」
としみじみ語ってくれた。
実験材料としてのバッタはものすごく魅力的だと思うので、精密にコントロールされた実験室で研究すること事態は決して間違っているとは思えないのだけど、現場で防除する人たちにしてみれば、何かギャップを感じるのだろう。
ラボ組と野外組の対立?みたいなものを感じる。
確かに机上の空論が少なからずある気がする。
自分はラボ組出身でこれから野外組の仲間入り。
これまでに生理学ができる生態学者的な存在のバッタ研究者はいなかったので、
新しい観点でバッタ問題に取り組むことができたら、新しい展開が待っている気が勝手にしている。
その他にもバッタの卵に関して超盛り上がった。
何を隠そう、自分も卵に関してはちょっとうるさいよ。
自分の卵に関する論文を読んでてくれててすごい嬉しかった。
お互いに卵のスペシャリストだったので、何か新しい発見したら連絡しあおうということに。
モーリタニア、マリ、セネガル、ニジェールの四カ国は季節を問わず常にバッタが発生しているので通称、
「フロントライン」と呼ばれているそうだ。
他の国では季節的に集中して発生する時期があるそうだ。
このバッタは風に乗ると一日に100km以上も飛翔し、調子に乗ると5000km飛ぶらしい。
そのため、隣国から飛んでくるバッタも重大な問題の一つだそうだ。
自国で防除が成功したとしても、隣国から飛んで来られてはたまらない。
「バッタに国境無し」
これはバッタ問題が抱える問題のうちの重要な問題の一つだそうだ。
アフリカ各地のバッタ情報に精通している大ボスと話をしたら、モーリタニアで研究するなら首都から300km離れたAkjoujtが鬼門だそうだ。
周りが全てバッタの生息地なので、野外観察するならもってこいだそうだ。
アフリカの中でも屈指の重要地点で研究することができたら非常に重要な知見が得られる予感がする。
重要なアドバイスをいただいた。
セネガルの長と話したら、
「時間があるときに是非ともセネガルに来て欲しい。2週間のプログラムでセネガル中の重要なポイントを紹介するよ。」
とありがたいお誘いを頂戴した。
アフリカでは学位を持ち、科学的なアプローチで研究をすすめる事ができる人はほんのわずかだそうだ。
バッタ防除のほうに人員がとられるのが大きな原因だそうだ。
会議は4日間のスケジュールで開かれる。
本日の会議の模様はモーリタニアテレビのニュースで放送された。
(NHKの19時のニュースと同じ立ち位置っぽい)
20時からはアラビア語で、21時からはフランス語で二回放送された。
モーリタニア代表の席に民族衣装を着ている日本人が座っていてさぞかしモーリタニア国民は混乱したことだろう。
次の日、テレビを見た研究所のワーカー達が
「おー 昨日テレビにコタロー映ってたぞ!ナイス民族衣装」
と集まってきた。
つか、みんなスーツなのに、オレだけ民族衣装でいいのかな?