サハラ砂漠に学ぶ暑さ対策


今、日本は猛暑の危機に瀕していると聞く。
急激な温暖化に日本人の体質がついていけていないのも一つの原因と思う。
ならば、昔から激熱なサハラ砂漠で生き延びてきた民が生み出してきた生活の知恵を学ぶのも良いのではないだろうか。


私は、フィールドワーク中は、気温45℃を超えるサハラ砂漠のど真ん中で、エアコン無しで過ごさなければならない。暑さ対策は生死に関わる重大な問題なので、人々と暑さの関係を目をそむけることなく見守ってきた。


今回は、モーリタニアで学んだ暑さ対策を日本の皆様に紹介したい。

(街中の写真は、移動中に車内から撮った片手間なものである)




1. 直射日光を避ける。
日陰は部分的にしかないため、人々の機動力が制限されてしまう。
しかし、モーリタニアの人々は日陰を人為的に作ることで、この問題を解決した。
彼らが編み出したのは「大きな帽子」である。



大勢の人々が、板きれを帽子代わりに使っている。

驚くべきことに、その帽子には無数のパンが乗っているのだ。


ここにも。


あそこにも。

そんな暑くなかったら、肩にかければいいぢゃない。

この帽子は回転可能なため、日差しにあわせてその巨大なつばの角度を調節できる機能を持つ。
また、十分な機動力を確保しつつも、商売も兼ね備えている優れものである。
この画期的な帽子を編み出したモーリタニアの人々に敬礼したい。



女子も頭に大きなモノを乗せて、日陰を作り、移動している。



長時間その場に留まらなければならない時には、ザルだ。

通気性に優れたザルに注目するとは、


(撮り損ねましたが、段ボールも可です)




砂漠の生物も徹底して直射日光を避けるために穴を掘る。
砂漠には穴がいっぱいあいてる。
うっかり、穴からオーバーランしているトカゲ。


(穴の中に逃げればいいのに、テンパってたんだろうな。)


そして、基本的に日中の活動を控え、夜に行動する。
(夜間シリーズは今のところ準備不十分)



砂漠にはポツリ、ポツリと東屋がある。

長旅に疲れた時は、ここで一休み。


行動的に日光を避けるのは最も賢い方法だが、日中に働かなくてはいけない生物はそんな悠長なことは言ってられない。
そんな時はどうしたらいいのか?

一つの解決策を見出した。




2. サハラのお茶

サハラの民は、どこでも、どんな時でもお茶を飲む。
街でも。

会議でも。


研究所のセキュリティの人々も大好きだ。
日が落ち、ラマダンから解放されたらすぐにこのお茶を飲む。


お茶をたてる。



ささっ 皆の衆、飲むが良い。



グイっと。




このお茶は、中国茶に砂糖とミントを加えたもので、とても甘い。
ショットグラスに注がれた熱々のお茶をグッと飲み干すと、なんだか体が軽くなり、疲れがとれる。
長時間暑い所で作業し、ひどい頭痛に見舞われた時も、このお茶を飲むと一気に治る不思議な効能がある。

10分置きに3杯飲むのが、御茶道だ。
このお茶は、モーリタニアだけではなく、サハラ砂漠上の国々で飲まれているそうだ。


作り方がとてもユニークで、砂糖をお茶に馴染ませるために、何度も何度もショットグラスでシェイクする。

その模様をミッション中に撮影していたので、動画で紹介したい。

サハラの茶道
■茶師:専属コックのシェフ。
■場所:モーリタニア北西部のサハラ砂漠、テント内にて。

(ついでに、自分がミッション中に味わっている疎外感もご堪能してください。何しゃべってるかさっぱりわからない。)



是非とも皆に、この魔法のお茶を振舞いたい。

しかし、それは願わぬ思い。

この距離を埋めることができない。




せめて、


せめて、



このお茶のレシピを自分なりに日本用にアレンジしたので紹介したい。



一杯目の材料


■水:200cc用(1人当たり30〜50cc。)
■砂糖:大さじ2.5~3杯
中国茶:大さじ1杯(渋みがあるお茶が良し。番茶も可と思うが、緑茶は知らない)
■生ミント少量(貴方の財力と嗜好に合わせて量調節すべし。)

茶法
1. 小さなヤカンに水とお茶を投入し、沸かす。
2. 沸いたら砂糖を投入し、スプーンでかき混ぜる。
3. 一度、コーヒーカップに注ぎ、またヤカンに戻す。
4. ミントを投入し、1分ほど火にかけ、完成
5. 少し、冷ましてから出す。


2杯目の材料
■水:200cc用(1人当たり30〜50cc。)
■砂糖:大さじ2.5杯

3杯目の材料
■水:200cc用(1人当たり30〜50cc。)
■砂糖:大さじ2杯



お茶の比較

貴方には、この3杯のお茶の違いが判るだろうか。
実は、3杯ともに微妙に味付けを変えているのだ。




コツとしては、砂糖の量を2杯目、3杯目と減らすことだ。
これをすることで口の中の甘ったるさを改善することができ、さっぱりできる。
また、熱さを変えることも重要だ。一杯目は少々冷ましてから、二杯目以降は熱々のまま楽しみなされ。



ミントは無くても大丈夫だが、やっぱりあるに越したことは無い。
どうしてもミントが手に入らない時は、フリスクとかロッテのガムでも入れればいいと思うよ。
(投げやりなアドバイスですが何か?)。





この三杯のお茶は、「三献の茶」をほうふつさせる。




時は戦国。
豊富秀吉が狩りの途中、のどが渇いて、ある寺に立ち寄り、
茶を所望したところ対応した寺の小僧が大振りの茶碗にぬるい茶を少量入れて出したそうな。

のどが渇いていた秀吉は一気に飲み干した。
まだ飲み足らぬ秀吉。喉が渇いているというのに少ししか茶を入れぬ、小僧に腹を立てながら、



「ええい。小僧、もう一杯だ」



今度は、小僧はやや小さめの碗に、やや熱めの茶を出した。

それを飲み干した秀吉。
先ほどの茶との違いに気づき、小僧の茶を不審に思う。


「ふむ。小僧、もう一杯たてよ」


と再度、茶を要求。

今度は、小ぶりの碗に熱くたてた茶を少量出した

「ほほう。小僧め。何を企んでおる」

このお茶を飲み干した秀吉は小僧を呼びつけ、
何故異なるお茶を出したのかを聞いた。
すると、小僧は秀吉の喉が何を求めているのかを察して、
それに合わせて茶を出したと答えた。


この気遣いに感心した秀吉はこの小僧を家来とした。
その小僧こそ、石田三成である。

この話は、石田三成を語る上では欠かせない「三献の茶」として知られる。


奇遇にも、ここモーリタニアでも気遣いがなされた三杯のお茶を楽しむ。



是非、サハラの暑さ対策として、この三杯のお茶をオアシスとして皆に献上したい。


茶器を揃えて日本に帰るので、帰国した際には皆に振舞いたい。
女子ウケするだろうという魂胆を秘めて。。。