CNNが紹介するバッタ研究所

CNNの取材が記事になりました。
ウェブ版に載っております。
http://whatsnext.blogs.cnn.com/2012/02/02/in-mauritania-sunny-with-a-chance-of-locusts/


日本語版のページが見当たらなかったので、英語検定4級の私が親孝行の一貫として訳してみました。
雰囲気だけでも味わってくだされば幸いです。
また、本文に誤りがあったため、訂正を入れました。
誤訳等に気づいたら教えてくだされば幸いです。


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モーリタニア、晴れ時々バッタ 
ジョン•D•サッター、CNNによる

ヌアクショットモーリタニア(CNN) -
サハラ砂漠の前線で、科学者たちは天気予報に "聖書に書かれたバッタ問題"を追加しようと無我夢中で取り組んでいます。


バッタの大群。


いつ、どこでバッタが数十億の群れを成すのかを予測するために、広大な砂地の西アフリカの国モーリタニアの首都にあるサバクトビバッタ研究所では、すべての種類の技術を採用しています。その中には、衛星画像を得るためのeLocust装置から、携帯電話を持つ砂漠の遊牧民から寄せられる莫大な量の報告等があります。
(注locust、バッタ)


希望としては、天気のようにバッタの群れを予測できるようにすることです。



それは小さな仕事ではなく、急を要します。バッタ - イナゴのような昆虫 – は、食糧不足と貧困を少なくとも3,000年にわたってモーリタニアで引き起こしてきました。バッタの群れが過ぎ去った地域では、樹皮は削がれ、根はかじられ、樹木は丸裸になり、地面は完全に丸裸になると言われています。

"バッタの群れは時に大空を覆い隠す"、とサバクトビバッタ研究所の研究者のシディ• ウルド イーリーは述べています。

数十億匹からなるバッタの群れ(1kmにも及ぶ)が過ぎ去った地域では、農民達は作物や食べ物が無いまま取り残されてしまいます。家畜も死に絶えます。 2004年、何千人もの人々が、主要なバッタの群れの影響を受けました。

モーリタニア北部の農民ベイダ ウルド ベイリがその時のことを良く覚えていました。バッタは彼の木の樹皮を食べ、空を覆った、そう、雲のように、と彼は語りました。



"神を除いて誰もバッタを止めることはできません。"



神 – さもなくば、おそらく科学者。





12月にCNNのクルーが出会ったサバクトビバッタ研究所の科学者によれば、これらのイベントを予測することで命を救うことができるそうです。



ハメド アブダライ ウルド ババ所長率いるバッタの研究グループは、どんな条件がバッタの群れに都合がよいのか、 "侵略"がどこで起こるのかに関する情報を集め、それは世界最大のバッタのデータベースになっています。

一般的に、これらの壊滅的なイベントは、砂漠で十分な雨が降り、その結果、エサとなる食草が十分に発生した時に起こります。研究所では、衛星画像でこのすべてを監視しています。そして、150人もの戦力となる研究所の職員が、フィールドからバッタの目撃情報についてのデータを即座にアップロードするためにeLocustと呼ばれる装置が使用されています。

最近ではその情報に加えて、研究所では、ヤギ、牛、ラクダの群れを引き連れて砂漠を歩き回るモーリタニア遊牧民の人々に携帯電話を与えて情報収集する活動を開始しました。研究所は、彼らにバッタを見たときに呼び出す無料の電話番号を与えています。そのすべてのデータは、群れが来るかどうかの判断に役立ちます。


バッタが群れを成すプロセスの多くは謎に包まれています。



しかしながら、


それは、バッタがどうして群れを成すのか誰も正確に知らないからです。


サバクトビバッタを研究するためにモーリタニアに来た日本の研究者、前野浩太郎は、サバクトビバッタが混み合いを感じ、体形や体色を変化させることから、バッタの群れは間違いなく‘何か’をしている、と述べています。


群れにならない無害なバッタは小さく、緑色です。
(注:この文は誤りです。無害の低密度下のバッタ、いわゆる孤独相バッタのほうが有害な群生相バッタよりも成虫体サイズは大きくなります。それは、孤独相バッタのほうが群生相バッタよりも脱皮回数が一回多いのがその原因の一つです。)
参考文献
Maeno, K. & Tanaka, S. (2008b) Phase-specific developmental and reproductive strategies in locusts. Bulletin of Entomological Research 98, 527-534.



お互いに混み合い始めた有害なバッタ (このグループのための科学的専門用語は、 "社交的"、しかし彼らの社交はカクテルを飲み交わすのとはあまりにもかけ離れている)は、大きくなり、人に恐怖を植え付ける赤と黒の恐ろしい体色になる。

(注1:gregarious phaseというのは日本語では「群生相」と訳されます。gregariousは社交的ではなく、群がると訳されることが多いようです。)
(追加写真。どちらもサバクトビバッタの幼虫。


混み合うと体色を変化させるのがこのバッタの特徴で、この現象は相変異と呼ばれています。群生相幼虫は黒化し、黄色やオレンジが混じった目立つ体色を発現します)




彼らの黒いアンテナは、彼らを小悪魔のように見せます。

(注:最近の我々の研究により、サバクトビバッタの雌成虫は触角で他個体との接触刺激を感受し、群生相化することが判明しました。)
参考文献
Maeno, K., Tanaka, S. & Harano, K. (2011) Tactile stimuli perceived by the antennae cause the isolated females to produce gregarious offspring in the desert locust, Schistocerca gregaria. Journal of Insect Physiology 57, 74-82.




なぜバッタが群れを成すのかに関して他の理論についても触れます。
バッタは共食いをするので、彼らの群れのサイズが大きくなり、エサ不足に陥ると他個体から食べられないようにお互いに避け合い始め、エサ場を求め互いに追い立て合おうとします。



(注:ここから本文で述べられていく話は、なぜ群れが形成されるのかを説明するものではありません。幼虫の群れの行動に関するもので、群生相の幼虫の群れは同一方向に行進するのですが、その原因の一つとして共食いが重要であると考えられています.群れ形成には集合フェロモンの関与が指摘されています)
参考文献
Bazazi, S., Buhl, J., Hale, J.J., Anstey, M.L., Sword, G.A., Simpson, S.J. & Couzin, I.D. (2008) Collective motion and cannibalism in locust migratory bands. Current Biology 18(10), 735-739.



(追加動画:実際にモーリタニアの野外で幼虫の行進行動を観察できました。)
群れが前進していくのは、他個体を食べようとする力と食べられまいとする力が原動力と考えられております。




その説は、プリンストン大学准教授のイアン コージンの仕事によりサポートされています。

これは、コージンがインタビューの中でその状況を説明したものです。

バッタは磁石のようなものです。磁石の中の磁性粒子は互いに整列する傾向がある。それらすべての磁石が整列しているとき、それは磁気を与える。だから我々は、バッタにある同様の数学的なルールを発見しました。それは、この整列から、壊滅的なバッタの群れを導くことができることが分かったが、なぜ整列したのかは分からなかった。それは、我々が偶然それを発見した時だった。これは大きな驚きだった。バッタはお互いに食べようとしようとしていたのだ。バッタの群れは協同体のように見えたが、現実には利己的な共食い集団だったのです。皆が皆を食べるようとしようとしている – そしてと食べられまいとしている。その結果は、向かってくるものから逃げようとするのと、遠ざかるものに向かおうとします。それは砂漠を移動する膨大な群れにつながります。周りに食べ物がありません。そこで、彼らは最悪な状況を最大限に作っているのでしょう。





ヌアクショットサバクトビバッタ研究所では、人工衛星、eLocust装置と遊牧民のレポートのデータを組み合わせるなど、これらの情報を使用してバッタの群れを予測する上でいくつかの成功を収めています。

例えば、昨年末には、研究所は事前に潜在的な群れを特定し、殺虫剤を使用して災害を未然に防ぎました。

しかし他の点で、研究グループはそれほど幸運ではありませんでした。


研究所が利用する衛星画像は、実際の群がるバッタを発見するのには十分に高精度ではなく、バッタの群れが起こるであろう地面(食草)の状態のみを知ることができるという難点があります。


ババ所長は、優れた高解像度画像のための予算やより頻繁なバッタの監視が必要とであると述べました。

オックスフォードからプリンストンに移った科学者が同様の問題と向き合っています。

バッタの群れに対する理解は成長を続けるだろうとババは述べています。研究所の大規模なデータベースから、研究者は5%のみを分析した、と彼は語りました。


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この記事に関して続々とコメントが寄せられています。

Danielさんより
Question for you: Do you catch and eat the locusts? If not, why not?
貴方に質問です。貴方はバッタを捕まえて食べますか?
もし食べないなら、なぜ食べないのですか?



Jimzcarzさんより
Chocolate covered grasshoppers anyone.
バッタチョコレートはどぉ?


engineer long timeさんより
Deep fried and dipped in soy....mmmmmmmmm. or ketchup....
バッタをカラりと揚げて、しょうゆ・・・ んんんんん ケチャップっしょ。




Deeさんより
Predicting the next swarm of locusts? February 5...Super Bowl Sunday @ my house. By 10 pm there'll be nothing left.
次のバッタの群れは予測できるのかい?2月5日の日曜日はオレん家でスーパーボールだぜ。10時までにはそこにはもう何も残らないぜ。


Emeliaさんより
Idiotic comments aside, it'll be very interesting to learn why they swarm when a conclusion is reached.
愚かなコメントの脇であれなんだけど、なぜバッタが群れるのかとても興味深いよね。いつになったら結論に辿り着けるんだろう?

バッタを食べることに関してのコメントがけっこう多いです。

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"神を除いて誰もバッタを止めることはできません。"
神 – さもなくば、おそらく科学者。

という文章にしびれました。


私は害の出ないようにバッタの数が増えすぎないようにをコントロールすることができればと考えており、
バッタを撲滅したり、全滅させる気は毛頭ありません。

日本の昆虫学者である桐谷圭司先生が提唱する「害虫も数を減らせば、ただの虫」という考えに賛成である。


「愛する者の暴走を止める」、というスタンスにおり、普段は日夜バッタの研究に没頭したいのです。

群れが形成されるメカニズム及び群れで行進するメカニズムについては個人的には別の説を考えており、それを実証できればと思います。特に、群生相の行動に関する知見はシュミレーションで得られたものがほとんどであり、野外でそれが当てはまるかどうかは実証されておりません。

リアルを知ること、これが自分がモーリタニアに来て研究する最大の目的です。