マダガスカルを襲うバッタについて

FAOによりますと、現在、マダガスカルで日本のトノサマバッタに似たマダガスカルトノサマバッタ(Locusta migratoria capito)が大発生し、主食の稲を始め農作物が壊滅的な被害を受けているそうです。


(日本のトノサマバッタ



すでに国土のおよそ半分の農作物が甚大な被害を受け、1300万人もの人々の生活に影響が出ている。マダガスカルは日本の国土の約1.6倍です。
(注:一部メディアでバッタの群れが国土の半分を覆っているとありましたが、公的文章にそのような記述は見られませんでした。)



ただでさえ貧困にあえぐ人々にとって食料価格の高沸、飢餓など深刻な事態は避けられない状況に陥っています。このまま手を打たなければ今年の9月までに国土の2/3が被害を受けると予想されている(1.5百万ヘクタール)。この事態を受け、マダガスカル政府は2012年11月27日に「バッタ警報」を発令している。今回は、1950年代に17年間続いたバッタ大発生以来の最悪な状況。


現地ではバッタの群れに巻き込まれると「バッタのほかは何も見えない」ほど大量のバッタが発生している。


バッタは2009年から数が増え始め、2013年2月後半にマダガスカルを襲った台風によって繁殖に適した環境がつくられました。要は、産卵するための湿った地面と餌となる植物が豊富になり、しかも例年よりも長く好適な状況が続いたことが原因となって今回の大発生が起きたと考えられています。


また、バッタの防除(殺虫剤の散布)は発生初期に速やかに行う必要があるのですが、バッタの発生が確認された2009年当初マダガスカル政府がバッタ防除の資金をねん出せずに、防除が遅れてしまったことも大発生を許してしまった一つの原因だと考えられます。


早期に防除を行わなければ被害及び防除費用が跳ね上がります。例えば、通常であればアフリカのサバクトビバッタでは年間3億円の防除費用で済むところ、初動が遅れたため2003-5年のアフリカでのサバクトビバッタの大発生の際には570億円もの予算が投じられました。一般的に問題が大きくなってからでないと政府は支援を行わないため、手遅れになりやすく、今回もFAOは早急な資金援助を求めている。
6月までに2200万ドル(約20億円)をかけて空中から殺虫剤の散布が計画されているそうです。



本種は通常、島に留まると言われているため日本に飛んでくることはなさそうですが、群れは、一日に5-130km飛翔することができるため、被害は一気に拡大する。


マダガスカルでは、この他にもアカトビバッタ(Nomadacris septenfascuata)とよばれる大型のバッタが大発生し、慢性的にバッタの被害が起きている。



2009年にはマダガスカルのバッタ防除に関する本が出版されている。



バッタは普段は大人しいが、数が増えるにつれ他の個体と接触する頻度が増えると姿形に行動までも変化させ、害虫化する特徴がある。この現象は相変異という特殊な生物現象として知られており、この能力のおかげでバッタが爆発的に大発生できると考えられています。



バッタの防除は「毒」である殺虫剤に頼り切りのため、環境汚染や人体にも悪影響を及ぼすリスクを伴っています。


現在、マダガスカル以外にもアフリカではサバクトビバッタという私が研究している別種のバッタがモロッコ、エジプトスーダンなどで大発生して問題になっております。


サバクトビバッタ



今回マダガスカルで大発生しているバッタも含めて、バッタの研究のほとんどは実験室内で行われており、バッタが野外でいつ、どこで、どうやって生活を送っているかという基本的なことですらざっくりとしかわかっていないのが現状です。


防除には莫大な予算が投じられますが、研究にはほとんど投じられていないのが現状です。バッタの生態を明らかにすることは、これまでにない新しい防除技術の開発に繋がります。



今春より、日本の農林水産省の支援を受け、西アフリカのモーリタニアにてサバクトビバッタの生態調査を行う予定です。問題解決に向けた活動になることを期待しています。





日本ではバッタは問題になりにくいため注目度は低いのですが、4月1日の「みのもんたの朝ズバッ!」がアフリカのバッタ問題を取り上げてくださりました。


(みのさん、さびしげなのは何故?)



朝食時にバッタの大群が放送されたため大不評でしたが、日本でバッタの放送がされたと聞いて嬉しくなりました。
バッタの専門家として恐れ多くもコメントを差し上げたのですが、国内外でバッタ問題の重要性が高まれば、きっと自分の研究ポストができると信じているので個人的に大変ありがたかったです。

(もっと早くアナウンスしたかったのですが、前日深夜に放送が決まったため遅くなりました)



4月10日より一ヶ月ちょっと日本に一時帰国いたします。



11日に池袋ジュンク堂本店にて行う予定のトークショーの方はおかげさまで満員御礼となりました。
http://www.junkudo.co.jp/tenpo/shop-ikebukuro.html#talk


初めてのリサイタルのため、やっていい事と悪い事の区別がついていないのでいささか不安は残りますが、当日はエチケット袋を配布して不測の事態に備えたいと思います。
出席者の方々はどうぞご安心下さい。
お忙しいところお越しくださり、恐縮です。



そして、27日はニコニコ学会βです。
座長のメレ山メレ子さん、メレンゲが腐るほど恋したい、で詳細をば
http://d.hatena.ne.jp/mereco/20130327/p1



帰国中も次に繋がる何かがあることを期待しています。



では、明日帰ります!



会えたらいいね。