『バッタを倒しにアフリカへ』行き、必殺技を見つけてきました

皆さまがお元気であることを信じてやまない2021年の秋。

今回、久しぶりのブログのため、力が入っており、めちゃ長です。

全部読むのに12分はかかるので、心してお読みくださいませ。

 

吉報です。

長い修行の末、とうとうバッタを退治する必殺技を編み出しました!

 

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(殴っているフリです。植物を痛めつけるようなことはしておりません)

 

私の正拳突きでも愛するバッタを叩き潰すことは可能ですが、彼らは空を飛ぶため、私のこぶしは彼らに届きません。

そこで、彼らの繁殖行動を研究し、その習性を逆手に取って、バッタをやっつけ放題になる状況を突き止めました。

 

 

研究内容に触れる前に、まずは今回の研究を実行するための私の心構えを先に説明いたします。

 

 

私は今、婚活中で、異性との出会いに大変興味があります。

出会うだけではダメです。相手に気に入ってもらい、そして私も相手を気に入るという、マッチングも望んでいます。

さらに、ゆくゆくは、私の素敵なパートナーをライバル達から守る必要性も感じています。

 

また、理論上、モテすぎて自分のタイプではない人に言い寄られまくると、その対応に追われてしまい婚活できなくなります。あくまで、理論上の心配です。

 

モテる男はツラいらしいけど、モテない男の方がツラい気がするのは私だけではないはずです。

私はバッタの♂♀を瞬時に見分ける特殊能力を秘めておりますが、婚活にはまったく役に立ちません。

しょんぼりです。

 

恋愛のはじめの一歩となる出会いが、コロナ渦ではそもそも無く、途方に暮れています。

結婚したいのに、出会いがない。

出会いが無いので、結婚できない。

私にできることと言ったら、途方に暮れることだけです。

 

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41歳、独りぼっちのブランコです。

 

大きめの冷蔵庫を買ったし、食器は複数揃えており、家族を築く心づもりは整えております。

ようやく就職もできたし、そろそろ結婚したいところです。

 

 

思い起こせば、ずっと恋愛には興味がありましたが、どうやって他の人たちが恋愛しているのか気になっていました。

 

 

23歳以降、私の身近な存在はバッタです。

バッタを毎日見つめる生活を送っていたところ、バッタがどうやってカップルになっているのか、疑問を抱きました。

 

 

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バッタのカップル(あれだね、略したらバカップルだね)

婚活の秘訣をバッタから聞き出し、自身の婚活に活用することができたら、自分の婚活もうまくいくし、研究成果も産み出せて一石二鳥やんか! 

という不純な心構えで行ったのが、今回の研究です。

 

 

 

サバクトビバッタの婚活、すなわち交尾・産卵がどのように行われているか、野外で研究した報告はほんのわずかで、深く調査されてきませんでした。

 

我々はモーリタニアサハラ砂漠で9年間にわたり野外調査を実施し、サバクトビバッタの大群は婚活を円滑に行うために、雌雄が集団別居していることを発見しました。

 

国際農研 プレスリリース:

www.jircas.go.jp

(バッタのイラストと参考図のデザインは弟の拓郎氏に作ってもらいました)

 

 

要は、常に雌雄が一緒にいると雌雄間でいざこざが生じるから、距離をとるとうまくいく、という繁殖システムをバッタが営んでいるのがわかりました。

出会い、マッチング、ライバルとの競争、無駄に言い寄られないようにするための工夫、といった数々の要求を「集団別居」というシンプルな行動をすることで見事に応えていたのです。

他の生物でもこの雌雄の「別居」が知られておりましたが、まさかサバクトビバッタの大群が集団で別居していたとは、よもや、よもやです。

 

雌雄共に婚活に費やすエネルギーは莫大なものになります。ほんとに。

 

サバクトビバッタにおかれましては、洗練された婚活システムが整備されているから、多くのバッタが無駄な争いや労力を払わずに繁殖できるから、婚活に関わるコストを削減でき、そのおかげでスムーズに大発生できるわけだ、と一人で納得しておりました。

 

 

バッタの成虫は群れで飛んで移動しますが、上空1800mまで飛翔することもあるそうです。

また、地面に降りているときに近づくと飛んで逃げます。

広範囲に広がって移動するため、防除(農薬の散布)が難しいという問題がありました。

 

オスが交尾するためにメスの成虫の背中に乗ると、オスは交尾に夢中になっているため、なかなか逃げようとせず、メスはオスがしがみついているせいで、飛んで逃げることができません。

 

 

 

 

産卵中は腹部を地中に差し込んで産卵するため、身動き取れず、しかも集団で産卵する習性があります。

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(産卵中に優しく引き抜くと、腹部がビロ~ンって延びたままで引き出すことができます。オスはメスをガードするのに夢中になっており、逃げたほうがいいのにと心配になります)

 

すなわち、「狭い範囲に、あまり移動しないバッタが大集合する」という、防除に絶好の状況が生まれていたのです。

もはや、農薬を散布するまでもなく、私の正拳突きが炸裂するという算段です。

 

 

 

なんで今まで、こんなことが見つかっていなかったというと、

1)現場にアクセスするのが難しい。

2)バッタは同じ場所にずっととどまっているわけではなく、移動しまくりのため、研究者が現場に遭遇できなかった。

3)誰も興味を持たなかった。

4)たとえ持ったとしても、研究できなかった。

のではないかと思います。

多くの人がバッタの大群に遭遇できたとしても、「うわー バッタがいっぱい」という感想を抱き、写真撮影に夢中になっていたのではと。

婚活には役立たずだった「バッタの雌雄を秒殺で区別できる」という、特殊能力が今回の研究では大いに役立ちました。

 

 

また、基本的に現地の防除活動は18時には終わります。

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(一仕事終わったら、みんなでまったり。労働者として当たり前の憩いのひと時です。)

 

 

バッタの集団産卵は、暗くなってから起こっていました。

 

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すなわち、サバクトビバッタは人間の隙をついて繁殖していたのです。一部の村人たちは、夜にバッタが産卵することを経験的に知っていて手づかみしていた報告もありますが、学術的に繁殖行動としては報告されていませんでした。

この習性を理解しておけば

「いつでも、誰でも、どこでも」

防除ができるのでは、と期待しております。

 

しかも、今回の発見をさらに発展させると、バッタの大量誘引法を編み出すきっかけになります。

そんな技を編み出すことができたら、好きな時に、好きな場所で、好きなだけ大群のバッタに包まれることができます。

すなわち、「バッタに食べられる夢」を叶えることに繋がっていくのです。

 

 

 

大きな前進ですが、バッタはシーンに応じて様々な行動パターンを示し、もちろん例外的な行動をしたりするので、より慎重な調査が求められます。

治安の悪いエリアがよりによって大量発生地帯だったりするし、そもそもサバクトビバッタは撲滅する必要はなく、増えすぎた分だけ、コラっ!と叱るのが良いのではないかと。そもそもバッタ好きだし。

 

 

今回は性成熟した成虫を対象にした研究内容ですが、未成熟の成虫や、幼虫用の対策も考えなければいけないし、あくまで「一手」を報告したところです。

色んなシーンに応じるため、手数を増やしていくことが大切だと考えております。

 

 

私の人生はバッタ色に染まっていると言っても良いはず。

TVチャンピョンで「サバクトビバッタ世界選手権」が開催されたら、上位に食い込む自信があります。

 

日本で8年間室内実験をして基礎固めをし、アフリカでは9年にわたって、野外調査し、あいだあいだでフランスとモロッコで実験させてもらい、データをかき集め、さらに2年かけて論文を仕上げました。爆量の文献を読み込み、何度も何度も論文を書き直し、仲間と議論を交わし、ようやく形になりました。途中、無収入になり、研究を続けられなくなる危機に陥ったりしましたが、長期間のデータを収集する研究は、期待と不安が詰まりまくりで心臓に悪いです。

それに、砂漠には面白そうな昆虫が意外と多く、他の虫に誘惑されてしまいます。

 

 

2018年から3年間の修行に出た最大の理由は、SNSを断ち、この論文に集中するためでした。

 

報告するだけなら簡単にできますが、私には野望がありました。

私が取り組むサバクトビバッタの問題を世界中の人々に知ってもらいたい。

それには、インパクトの大きい雑誌から論文発表することが有効な一つの方法です。

今回、論文が掲載されたPNASという雑誌は、絶好の雑誌の一つです。

私にとっての、チョモランマ級の雑誌です。

 

オープンアクセスになっているため、どなたでも無料でダウンロードできます。

https://www.pnas.org/content/118/42/e2104673118

①ここから入って、

②クリックすればOK

 

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(貴方様にとって、生まれて初めてダウンロードした論文になれば、嬉しいです。)

 

しかも、「in this issue」という、冒頭で特別に紹介されました!

In This Issue | PNAS

 

これは嬉しいご褒美です。

 

 

論文を掲載してもらうには、洗練された文章、論理展開、面白さ、新規性が求められます。

しかも、多くの読者に読んでもらうため、普遍的な話を展開する必要があり、バッタの情報だけでなくて、ほ乳類、鳥類、爬虫類、魚類、節足動物類と幅広く、動向を知る必要がありました。

 

 

自身の研究力をレベルアップさせなければ、論文を仕上げられないと思い、鍛錬を重ねました。

色んな人に校閲してもらったため、結局は人の手を借りて論文を仕上げたのですが、まずは自分自身がMAX努力することが大切だと思います。たとえ、自分の渾身の文章が跡形もなく修正されたとしても、フルパワーで考えぬいたことは無駄にはならず、次に必ず繋がります。

 

 

著書「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社新書)の後書きで、論文発表できてないから研究内容について触れられなかったと言い訳しておりますが、当時はまだデータを取りきれていなくて「待ち」の状態でした。これだよ! この話も胸に秘めていました!

「私の怠慢が原因でほとんど論文発表していないため」と説明していますが、寝っ転がったり、女の子と遊びに行ってたわけじゃなくて、力の限り、研究していたよ。

 

(おめでたいアナウンス)

光文社新書は20周年を迎えました! 

おめでとうございます!!

透明感抜群で優しく柔らかい木漏れ日がその笑顔に似合う、日向坂46影山優佳さんがお祝いのフェアキャラを務められております。 書店には影山さんの特別オビがバッタ本を優しく包んでくださっております。御礼申し上げます)

shinsho.kobunsha.com

 

 

おかげさまで、バッタ本は21.4万部、16刷りになっております。

(あれだよ、印税はありがたく活動費に充てさせていただいております。高級車を買って乗り回したりとか、夜の街に入り浸るとか、そんなつまらないお金の使い方はしていないので安心して。みんながきっと喜んでくれるような印税の使い方しているから、お伝えできるまで楽しみにしてて!

*2022年1月某日追記「夜の街に入り浸るとか」と、書いたものの、夜にきちんと遊んだこともないのに、つまらないと決めつけたこの書き方は、我ながらよろしくないと思います。ちゃんと遊んでから判断すべき記述であったと反省しております。なに誠実さを売り出そうとしてるの?過去のオレ。ダセーよ。なんぼ婚活に必死になって良い自分を見せようとしているの? 本当は夜の街に繰り出したいはずなのに。

何もしないのを正当化しようとして、ダセーよ。知らずに決めつけること、これ、よくない。誇りを持って夜の街で働いている方々に失礼千万の書きぶりで、すごくすごくよくないよ。私は、夜の街を知る必要があると思います。)

 

本がたくさん注目を浴びている一方で、

論文発表しなければ、何もしていないのに等しいため、一部の方たちからは「この目立ちたがり屋め」と罵られてきましたが、私を信じて応援し続けてくれた方々に、今回の論文を捧げることできて嬉しいです。

 

ちやほやと褒められたら、そりゃ嬉しいです。ただ、私が嬉しさの快感を感じる瞬間は、「バッタってこんなことしていたんだ!」とバッタのすごさに共感してもらえたり、他の研究者が我々の論文を引用してくれて論文発表しているのを見つけたときです。

色々と嬉しさを感じることはありますが、この嬉しさは格別であり、論文発表した者にしか味わえない快感です。たとえ引用されずとも、論文発表できたときはすごく嬉しいですが、別の研究者の役に立てたらいいなぁ、という思いを抱いて論文を書いています。

今回の論文もですが、研究者はすさまじい労力をかけ、多大なる私財を投じて論文を発表したとしても、個人的に一円ももらえません。

じゃあ、なぜがんばれるのか、この原動力はどこから来ているのかは、また別の機会に。

 

 

 

思い起こせば、途中、無収入になったり、バッタがいない年もあり、大変でした。

無収入になったとき、この発見を発表しなくては人類の損失が大きすぎると思い、何としてでも研究者として生き延びねばならないという使命感がありました。

京都大学白眉プロジェクトが無ければ、研究者生命が断たれ、危ういところでした。

そして、皆さまが応援してくれたおかげで、くじけずに論文発表できました。

危なっかしいからかもしれませんが、自分は日本で一番、心配されて、応援してもらえる研究者だと思っています。応援を力に変えることができ、皆様に結果報告できて嬉しいです。

 

 

 

しかもです。今年、2021年はロシアの昆虫学者ウバロフ卿がバッタの「相変異」を発表してから100年目のメモリアルな年です。

そんな年に、ウバロフ卿に捧げる論文を発表できたのも何か運命を感じます。

天国で、色々と語り合うのが楽しみです。

歴代のバッタ研究のレジェンド達もきっと喜んでくれているはず。

 

 

当たり前ですが、私一人の力で全てを行ったわけではありません。

この一世紀の間に先人の研究者たちの尽力により、たくさんの重要な発見がありました。

さらに、バッタ防除のために、被害国には防除センターが配備され、闘う段取りが整えられてきました。

先人が礎を築いてくれたからこそ、サハラ砂漠でフィールドワークができ、今回の発見にたどり着くことができました。自分自身の努力はもちろんあると思いますが、先人の知的努力のバトンリレーを受け継ぎ、新たなる発見に繋げました。

 

ババ所長のおかげ、ティジャニのおかげ、懐中電灯を発明した人、車を発明した人等など

全ての人類のおかげです。

この時代に生まれた恩恵を思う存分、生かしました。

 

 

 

ただ、今回の論文は完璧とは言えず、やり残したこと、調べきれていないことがたくさんあります。未解決の問題は、自分自身がこの後、調べ上げていくつもりですし、できるところまで調べ上げ、次世代の研究者へとバトンを繋ぐことができるようにしたいです。

 

そもそも、論文の書き方やデータの解釈など、初めて取り組む研究テーマのため、専門家の目には不十分に映るかもしれません。

学会などでお会いした時に、個人的に色々と議論を交わすことができれば嬉しいです。

 

 

いずれ時間を見つけて、今回の研究内容を主軸にした本を書き、裏にはどんなドラマが秘められていたのかを皆さまにお伝えしたいです。

しかしながら、まずは論文書きや調査・実験に精を出します。

論文発表するときは、発表するネタの順番も大切です。

この内容を発表してからでないと、次の論文が発表できないことがあります。

今回の論文は時間がかかり、おかげで後に控えている論文があります。

フン詰まり状態がようやく解消できたので、ガンガン論文発表していきたいと思います。

 

これで終わりじゃないよ。こっからだや!

 

 

 

それにしても、サバクトビバッタがすごい!

シンプルな方法で、絶妙なバランスをとりつつ、余計なムダを減らし、ベストパートナーに巡り合って婚活してるのはスゴすぎる。結婚相談所も婚活アプリも思いつかない方法なのではないでしょうか?

 

 

サバクトビバッタは、まだまだスゴイことをしているはず。

そのスゴ技を一つずつ解き明かしていくのが私にとって最も興奮する行為であり、至高の贅沢です。

さらに「バッタ、スゲー」と褒めてもらえるのが、嬉しいこと限りなしです。バッタが褒められると私はものすごく嬉しいのです。

これからもバッタのすごさを皆さまに伝える代弁者になるべく、精進します。

 

 

 

そして、多くの方々がご存じのように2020年頭からサバクトビバッタの大発生が世間から注目されました。

注目が高まれば、それだけ関連論文も受理されやすくなる気がします。

今回、私たちの論文がPNASのような幅広い読者層向けの雑誌に受理されたのも、いわば、サバクトビバッタが暴れたおかげと言えます。

せっかくアフリカに行っても一匹のバッタにも出会えない地獄のような不運にも恵まれましたが、今回はバッタ達に後押しされました。サンキュー!

不謹慎ながらも、バッタ大発生の恩恵を受けた格好です。

注目されているときにタイミング良く、論文発表できたら良かったのですが、皆様が忘れかけているときに発表して思い出してもらうのも重要なことです。

ちなみに、インド・パキスタン方面のバッタの発生は終息したものの、まだアフリカの角とイエメンではバッタの大群が出現しており、さっそくこの情報をバッタ関係者たちにお伝えする次第です。

 

 

 

最後に、みなさまにお伝えしたいこととして、日本の若手研究者の可能性に懸けてみてください。

 

人類史が始まって以来、これまで、いったいどれだけの人々がサバクトビバッタを目撃してきたことか。

世界的な害虫なのですが、実は、野外での繁殖行動はほとんど研究されてきませんでした。

害虫の繁殖メカニズムの理解は、害虫を管理(退治)するためには必須な情報です。

実は、肝心の情報が欠けたまま、人類はサバクトビバッタと長年にわたって闘ってきたのです。

 

実際には繁殖行動は、ただ見落とされてきただけなのですが、あえて、謎と言わせてください。謎となっていた繁殖行動の一端を、サバクトビバッタに縁もゆかりもない日本の、若手研究者(当時31歳)、しかもフィールドワーク初心者が解き明かしました。特別な装置や薬品など使わず、シンプルな観察がメインの手法で。これは、日本の研究者育成システムの賜物と言えるのではないでしょうか。日本学術振興会の海外特別研究員のような、若手研究者が世界で研究できる機会に恵まれるシステムは大変ありがたいです。

 

 

 

日本の若手研究者は、世界が抱える難問を解き明かすことができるポテンシャルを秘めています。ただ、今回の研究のように時間がかかるものもあり、2、3年の研究成果だけで評価されるシステムだと、チャレンジングな課題に挑めないです。

 

 

自分がこれまでにとってきたトリッキーな戦略のように、研究者自身が有名になって、注目を浴びて研究を続けるようなことをすると時間がかかって、研究に費やす時間と精神が削られてしまいます。

 

私は、有名になるために研究したのではなくて、研究するために有名になったのです。

今回の研究成果を発表するために、有名になったと言っても過言ではありません。

 

有名になったせいで、数々の弊害に直面し、うんざりすることが多々あります。

しかし、有名になったおかげで結果的には多くの方々にサバクトビバッタに関心を持ってもらえたし、今回の論文発表もファンの皆様にとっては待ち望んでいてくれた、身近な話として喜んでもらえると思うし、良いこともあるのは事実です。

所属機関の国際農研の知名度向上に貢献できるし、所轄の農林水産省の活動紹介にも繫がります。

 

何がどこでどう繋がるかはわかりませんが、未知数の研究力を備えた若手研究者が思う存分に研究に専念できる環境整備は大きな課題の一つです。

皆さま、どうか若手研究者を温かく見守り、応援くださいませ!

(若手に限らず、中堅とシニアも)

 

 

そして、困窮している婚活野郎のほうも応援してください!

いつか、昼下がりの公園で息子とキャッチボールしながら、娘とお姫様ごっこしつつ、人生のパートナーと微笑み交わしたいものです。

 

と、思っていたけど、オレ、人間の女子のこと、好きなのかな、、、

あれ、どうなんだろう。。。。 なんか、よくわからなくなってきた。。。

もう、いいや。

 

 

ちょっと、バッタ見てくる!

 

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P.S.

 

 

この写真はハロウィン用に撮影したものです。

ハッピーハロウィン!

 

 

 

約束の日: Just three years

今日という日が何の日かわかりますか?

 

そうです。

3年の修行から帰ってくると約束した日です。

いきなり、丸森さんのお店で青森料理と美味しいお酒を堪能しましたが、

無事に修行から帰ってくることができました!

 

 

みんな、ただいま!

 

 

手ぶらで帰ってきたわけじゃないです。

修行の成果として、、、

 

まずは、国際農林水産業研究センター(国際農研)の主任研究員に着任し、引き続き、サバクトビバッタの防除活動に従事することになりました!

 

41歳で定職に就きました。

これで職の憂いなく、研究に力を注げます!

ブログを始めて10年。

長きにわたり、たくさんの応援ありがとうございました! 

 

 

 

そして、「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社新書

 

 

こちらのラストシーンの一部が論文になりました。

無料でダウンロードできるので、チラ見してみてください。

とくに図1(Fig.1)にはババ所長が登場しております。

 

 

www.mdpi.com

(↓ダウンロードの仕方) 

 

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「Download PDF」をクリックしたらダウンロードできるはず。課金とかないから安心してください。本当に何も請求しないので。

 

要は、

サバクトビバッタの大群は暗くなる前に大きい植物に群がってきて一夜をそこで過ごす」

という内容です。この研究成果を応用すると、周りに自分よりも大きい植物がなければ、バッタを自分に群がらせることができる可能性があります。

機会があれば、テストします。

 

 

 

 

そして、フィールドとなっているモーリタニア・イスラム共和国から、

「2020年度 シンゲッティ賞(科学技術部門)」

を授かりました!

 

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(撮影:音速の貴公子・ドライバー・ティジャニ)

 

本賞(Chinguitt Prize)は、モーリタニア政府が毎年主催しており、モーリタニアの文化や芸術、科学の発展に貢献したモーリタニアや外国の研究者が表彰されます。審査には大統領も関与し、モーリタニアで最も権威ある賞の一つであり、名称の「シンゲッティ」はイスラム7番目の聖地として11世紀ごろから栄え、ユネスコ世界文化遺産の指定都市としてモーリタニアを代表する歴史ある街として知られています。

メダルは、シンゲッティの象徴ともいえるモスクをモチーフにし、学業をイメージされているとみました。

 

 

ババ前所長に推薦していただき、受賞いたしました。

コロナの影響で受賞式は中止となりましたが、立派なメダルと賞状をいただきました。

 

 

ティジャニがご近所さんたちから、「お前の相棒がシンゲッティ賞を受賞したそうじゃないか! おめでとう!」と祝福されまくったそうで、モーリタニアでのシンゲッティ賞は抜群の知名度ですが、たぶん、日本人で初めて受賞したため、日本での知名度はほぼほぼゼロのため、元気よく紹介していきたいと思います。

  

今回の受賞は、「お疲れ様」という労いの意味よりも、「これからもモーリタニアのためにがんばってくれ!」の激励の意味だと捉えました。

モーリタニアで行ったフィールドワークの成果のおかげで約60ヵ国にまたがるサバクトビバッタ問題を解決出来るように、研究チームと力を合わせてめっちゃがんばります!

 

 

今日という日を今か今かと、3年間ずっと待ってのブログ更新となりました。

 

本の登場人物はみんな元気でやっております!

 

今まで様々な人たちに助けてもらったおかげで、今日という日を迎えることができました。まだまだ助けてもらいまくりですが、今後も色んな人たちと連携しながら研究を進めていきたいです。

 

 

まだまだ報告したいことはあるので、追々。

今後ともよろしくお願いいたします!

 

憩いの場・酒場ル 丸森 (高円寺にある青森料理居酒屋)

砂漠での調査中、朝飯からヤギ肉の内臓などを胃袋に詰め込んだ蒸し焼きが出てきます。


一日の最初に口にするものが脳ミソの日、一日を複雑な気持ちで過ごすことになります。

(朝の砂漠は冷え込んでいるので厚着してます。この数時間後、40℃を超えます)




嫌いじゃないけど、こんな生活を送っていると当然、日本食にかぶりつきたくなるわけで。

帰国後、駆け込む居酒屋が高円寺にあるんです!

酒場ル 丸森 
https://qeethk8.wixsite.com/sakabarumarumori/blank


青森料理と美味い酒を提供することに定評があるお店。


見てよ。この美味そうな青森料理の数々。

青森県をかたどった、津軽味噌のアジなめろう


(トゲクリカニ。実家でお母さんがカニをむいてくれる以外、初めて他人にむいてもらいました)



ニシンと大根をうまい具合に料理した一品。
(写真:ナオさん)



これらの料理を食べるたび、生きて帰ってこれて本当に良かったとしみじみ思うわけです。




この料理の写真は、先日の「世界一受けたい授業」を丸森で友人たちと観覧したときの宴会料理の数々です。

右上が店主のまる氏。




まる氏とは浪人時代の寮生活を共に過ごした仲であり、切磋琢磨した関係。

(キン肉バスターをかけてるのがまる氏、かけられているのが私。危うく命を落とすところでした)



日本食を普段から食べていても、丸森の青森料理にはいつも癒されます。
秋田出身ですが、青森料理、うまいです。





番組で、秋田出身なのに津軽弁をしゃべるシーンが出ましたが、あれは青森の友達に向けたビデオレター用に津軽弁をしゃべっていただけで、秋田弁を忘れたわけではありません。ネイティブの人にしてみたらまだまだですが、私は秋田弁と津軽弁をしゃべれます。学生時代に津軽弁を必死にマスターしたのですが、アフリカで使う機会は皆無です。


秋田県民なのに津軽弁をしゃべっているシーンが全国放送され、秋田に帰りづらくなっています。



番組見逃したから、ちょっと何言ってるかわからないという方。

まる氏がお店で録画してくれているので、見せてーとおねだりしてください。

 
酒と青森料理を堪能しながら、バッタの授業もお楽しみください。



バッタ博士が普段何食べているか知りたいという質問がやたらときており、
現場から食レポートでした。


酒場ル 丸森 
https://qeethk8.wixsite.com/sakabarumarumori/blank

戦士は修行しに旅立つ法則

どうしても倒せない相手がいるとき、ヒーローはどうするか?



ドラゴンボール孫悟空は、界王星に行ったり、精神と時の部屋にこもったりして修行しました。

ワンピースのルフィと仲間たちも二年間、それぞれ離れ離れになって修行をし、パワーアップしました。


博士も戦士。私も、倒さなければならない問題に遭遇しております。


こんなことして、遊んでいる場合ではないのです!


今のままの私ではぶち当たったバッタの謎を解き明かすことはできない。
全勢力を注ぎ込み、新たなる力を手にしなければ、乗り越えられないところにきました。
ということで、これから3年間に渡り、修行の旅に出ることにしました。



決して、本が予想外に売れたおかげで毎日のように取材やら執筆やら講演会の依頼を受け、研究の時間を確保できなくなり、軽くノイローゼになっているからではありません。
人に会うとあれこれしてくれと依頼されるため、もう人に会いたくなくなっているからではありません。


しかしながら、今まで応援してくださった皆様に挨拶せずに旅に出るのも礼儀に欠ける。
かといって全国各地を巡って皆様に挨拶に行く時間がとれず。

どうしたらいいか。



ということで最後に全国ネットのテレビに出て、皆様に御礼を伝えます。

世界一受けたい授業
http://www.ntv.co.jp/sekaju/


5月5日19時から放送の子供の日スペシャルに出演予定です。
さっき、予告でチラッと映ってた。
(動くティジャニも放送されるかも)

収録は終えており、あとは私が悪いことをして出演取り消しにならない限り、放送される見通しです。


当日の衣装は、お楽しみに。



番組を見てくださり、取材やら執筆やら何か依頼を考えられる方が出られるかもしれません。
ご興味を持ってくださり、大変嬉しいですが、今回の番組出演で全てを出し切り、旅立ちます。

これからは本業に集中したく。
くれぐれも念を押しておきますが、貴方様のご依頼メールを作られる労力を全て無駄にしてしまうため、「もしかしたら」を抱かずに温かく見守っていただけましたら幸いです。


今後は、研究・教育関係の活動のみご相談させていただきたいと考えております。
ほとんど日本におりませんが善処する所存です。



3年後、成長した姿で皆様の前に舞い戻ってきたいと思います。
みんなから忘れられるかもしれませんが、私はどうしても研究者としてかっこいいバッタ博士をお見せしたいのです。

時間がかかってしまいますが、皆様の温かい応援を背に受け、旅立ちます。


たまに近況報告しますのでー

皆様も健やかに一緒に戦っていきましょう。


行ってきます!!!

業務連絡:旅に出ます

停車中の車に乗っていて、めんたいこのおにぎりを食べました。
うっかりとめんたいこをシートベルトにこぼしてしまったので拭こうとしてシートベルトを外したら、
めんたいこ付きのベルトがスルスルと収納部位に戻っていきました。


己の愚かさと無力さと噛みしめました。

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バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)を出版してから、ちょうど3ヶ月が経ちました。
皆様には、新聞、雑誌、ラジオ、ツイート、ブログ等、各方面にて拙著を宣伝していただき、おかげさまで8刷り9万部となりました。


先日は、盛岡のさわや書店ORIORI店にて盛大にトークイベントを開催させていただきました。

(@HERO_WOLFDOGさん撮影)






10万部に達するまでは責任を持って宣伝活動をしようと決意し、婚活の時間を削って可能な限り活動してきましたが、今年の取材対応はここまでにさせていただきたく。


決して婚活のためではなく、9月から長期の海外出張が控えているためです。どこかは言えませんが、遠い国です。




執筆や講演の依頼も相次いでおりますが、当面はお引き受けすることは大変難しい状況です。


お声掛け頂くのは当然嬉しいのですが、時間をかけてつくっていただくご丁寧な依頼をお断りするのが申し訳なく思います。


皆様からのご期待と温かい励ましを力に変えて、本業の研究の方で応えていきたいと思っております。


明日、8月18日(金)は、今年最後のラジオ出演となり、
大竹まこと ゴールデンタイム!」14:20〜と、
荻上チキsession22」22時〜、いずれも生出演してきます。

最後に盛大に宣伝してきます。




私は任期付き研究員のため、今、研究をがんばらないと、再び無収入に転落です。
研究ができなくなるのはもうこりごりです。


先日、ノーベル賞受賞者大隅良典先生と梶田隆章先生と若手研究者育成に関して対談を行ってきました。

国立大学協会広報誌 http://www.janu.jp/report/
Opinion [座談会]
【特集】若手研究者の育成  日本の研究力を守る


その模様が記されたPDFは、自由にダウンロードできます。
http://www.janu.jp/report/files/janu_vol45.pdf


色々とお話をお伺いし、研究のことをより深く考えるようになりました。


私は、研究のことを世に知ってもらう宣伝活動と研究活動の2軸を柱にバランスを考え、動いております。

今回の出版のおかげで、大勢の方々にバッタ問題を知っていただくことができました。
明らかに宣伝活動のほうに力が偏っており、研究活動のショボさが際立っているため、
今度は研究活動に力を入れるステージに来ております。


9万部に匹敵する研究成果を生みだすのは、なかなかしんどそうですが、やりごたえがあります。


ということで、


しばらく、ふつうのハカセに戻り論文執筆がんばります。


静かなときは研究か婚活をがんばっているときなので、
見守っていただけますと嬉しいです。


季節の変わり目には近況報告したいと思います。
気長に、今後ともよろしくお願いいたします。


皆様におかれましても健やかにお過ごしされますように。

こわいほど世界を飛び回る虫博士の冒険の書 『昆虫こわい』(幻冬舎)

虫界隈ではお馴染みすぎる丸山宗利博士がこの度、『昆虫こわい』(幻冬舎)を出版されました!

[カラー版]昆虫こわい (幻冬舎新書)

[カラー版]昆虫こわい (幻冬舎新書)

文章に加えて写真が全てカラーなのに本体価格が1000円とは。
幻冬舎さんの営業努力がキラリと輝く。


丸山博士はアリの巣の中に居候している昆虫の新種を発見するスペシャリスト。
丸山博士のお目にかかれば、日本ですら新種が見つかるんだから、調査が進んでいない外国に行ったら何が起きるのか?


そう、この書では丸山博士の新種発見フィーバーが続くのだが、新種ゲットに行きつくまでの冒険の過程を紹介しているのが、本書の特徴の一つである。

不便な思いをし、おっかない目にあったり、現地の人の優しさに触れたり、と昆虫学者が感じたこと、見たこと、聞いたことがそのままに綴られているが、南米やアフリカなど、所変われば味わう「こわさ」も変わっており、次はどんな目に遭うのだろうとイジワルにも丸山博士がどんな目に遭うのかが楽しみになってくるのも本書の特徴だ。




色んな昆虫の美しい写真がてんこ盛りの中、「ハネカクシ」というアリの巣に紛れている甲虫の採集が本書の一つのカギを握っている。
各地にハネカクシを求めて飛び回る丸山博士の恐ろしいところは、50年も前にたった一度だけ見つかっていたハネカクシの名前を憶えており、発見次第叫ぶことができるのだ。

「エキトクリプトゥス」
「ワズマニナ」
「エキトデーモン」
なんの呪文ですか?と丸山博士の記憶力のすごさと、新種を発見してやるぞという意気込みがひしひしと伝わってくる。

研究者目線としては、色んな地域に行って新種の昆虫を見つけるだけでも十分な成果となるのに、その一つずつの成果を組み合わせ、壮大な研究テーマに挑んでいた真の魂胆が最後に明かされ、おおぅと唸る。12年間に及ぶ、地道な研究が発表されたときの充実感たるや、感慨深いものがあっただろう。




質の高い学術論文も発表しながら、本を執筆される丸山博士。
同じく研究を生業とする者からの一言感想としては、
「丸山博士の生産性の高さが、こわい」






その「こわさ」のおかげで、多くの人たちが虫に魅了され、昆虫学者の魅力が世に広まっていく。

この本を読んで、もっと過酷なところへ丸山博士を送り込みたくなってくるのは私だけではないだろう。

丸山博士は、印税を調査費用に回すとか。
この本が売れて、次なる舞台へと旅立つ展開を期待したい。

PS
章の扉ページには、その章を象徴するイラストが描かれており、楽しみどころの一つ!
しまだななさんの画力が唸っている! すき。


今作が気に入って、もっと丸山博士の活動を知りたい、アリの巣にいる虫のことを知りたいと思ったら、
他の作品もオススめ

アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)

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昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

秋田市民文化講座 ほくとライブラリー土崎図書館 『バッタを倒しにアフリカへ』

地元、秋田で講演会を行います。


舞台は、母が「ファーブル昆虫記」を借りてきた土崎図書館。



多分、地元でアフリカにバッタを倒しに行ったのは私が初めてのはずです。


弟の拓郎氏に頭の悪いポスターを作ってもらいました。





幅広い年齢層にお話しできればと図書館員さんと相談し、
午前は、小学生と保護者向け
午後は、中学生以上の大人向け、の二部構成となっております。

(※注 「おらほ」は「私たちの」のという秋田弁です)





実は、前館長の桜田さんから、
「地元出身で外国さ行ってがんばってる人はあんまし、いないがら、なんとか一つ土崎図書館で話してもらって、盛り上げてもらえないすべが?」
と2年前にお声掛けいただいておりました。
桜田館長は昨年度退職されたのですが、今回の出版を機に、満を持しての凱旋講演の準備を進めておりました。



そんな中、



先月、桜田前館長が急逝されました。



残念です。



一番楽しみに待っててくださった桜田前館長の前で講演できないのは無念ですが、お声掛けくださった桜田前館長のためにも、昆虫学者を目指すきっかけとなったファーブル昆虫記を貸してくれた土崎図書館のためにも、地元秋田で講師の大役をしっかりと努めてきたいと思います!



おそらく、自分の同級生が子供を連れてくることが予測されますので、気合い入れて向かい撃ちます!