こわいほど世界を飛び回る虫博士の冒険の書 『昆虫こわい』(幻冬舎)

虫界隈ではお馴染みすぎる丸山宗利博士がこの度、『昆虫こわい』(幻冬舎)を出版されました!

[カラー版]昆虫こわい (幻冬舎新書)

[カラー版]昆虫こわい (幻冬舎新書)

文章に加えて写真が全てカラーなのに本体価格が1000円とは。
幻冬舎さんの営業努力がキラリと輝く。


丸山博士はアリの巣の中に居候している昆虫の新種を発見するスペシャリスト。
丸山博士のお目にかかれば、日本ですら新種が見つかるんだから、調査が進んでいない外国に行ったら何が起きるのか?


そう、この書では丸山博士の新種発見フィーバーが続くのだが、新種ゲットに行きつくまでの冒険の過程を紹介しているのが、本書の特徴の一つである。

不便な思いをし、おっかない目にあったり、現地の人の優しさに触れたり、と昆虫学者が感じたこと、見たこと、聞いたことがそのままに綴られているが、南米やアフリカなど、所変われば味わう「こわさ」も変わっており、次はどんな目に遭うのだろうとイジワルにも丸山博士がどんな目に遭うのかが楽しみになってくるのも本書の特徴だ。




色んな昆虫の美しい写真がてんこ盛りの中、「ハネカクシ」というアリの巣に紛れている甲虫の採集が本書の一つのカギを握っている。
各地にハネカクシを求めて飛び回る丸山博士の恐ろしいところは、50年も前にたった一度だけ見つかっていたハネカクシの名前を憶えており、発見次第叫ぶことができるのだ。

「エキトクリプトゥス」
「ワズマニナ」
「エキトデーモン」
なんの呪文ですか?と丸山博士の記憶力のすごさと、新種を発見してやるぞという意気込みがひしひしと伝わってくる。

研究者目線としては、色んな地域に行って新種の昆虫を見つけるだけでも十分な成果となるのに、その一つずつの成果を組み合わせ、壮大な研究テーマに挑んでいた真の魂胆が最後に明かされ、おおぅと唸る。12年間に及ぶ、地道な研究が発表されたときの充実感たるや、感慨深いものがあっただろう。




質の高い学術論文も発表しながら、本を執筆される丸山博士。
同じく研究を生業とする者からの一言感想としては、
「丸山博士の生産性の高さが、こわい」






その「こわさ」のおかげで、多くの人たちが虫に魅了され、昆虫学者の魅力が世に広まっていく。

この本を読んで、もっと過酷なところへ丸山博士を送り込みたくなってくるのは私だけではないだろう。

丸山博士は、印税を調査費用に回すとか。
この本が売れて、次なる舞台へと旅立つ展開を期待したい。

PS
章の扉ページには、その章を象徴するイラストが描かれており、楽しみどころの一つ!
しまだななさんの画力が唸っている! すき。


今作が気に入って、もっと丸山博士の活動を知りたい、アリの巣にいる虫のことを知りたいと思ったら、
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