海の底に
先日の砂丘地帯での調査中の出来事です。
隊長「なぬ? 前進あるのみ!」
隊長「こ、これは・・・。ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞小説家の朱野帰子さんの「海に降る」ではないか!!!」
と、茶番はここまでにしといて、実は昨年の頭に朱野さんが御著書をわざわざモーリタニアに送ってくださったのです。
6か月かかって無事に届いたので、とりあえず埋めてみた次第です。
(人様の著書を地面に還してしまい申し訳ございません)
この本は、深海に思いを馳せる男女の夢を「しんかい6500」という潜水艦を通して描いたドラマチックな物語です。
海の底に潜るための潜水艦の定員は決まっている。
パイロットのイス。研究者のイス。
そのイスを巡るドラマ。そして、男の人生をも惑わした深海に潜む謎の生物とは一体。
簡単に読書感想文しますが、
次の展開が気になり、読みだすと止まらなくなる魔性の本で、気づくと三回読んでしまいました。
センター試験の前日に決して読んではいけない本です。
単純なのですが、知らない世界の話だったので話の全てが新鮮で鮮烈でした。
私はほとんど本を読んでこなかったのでわからないのですが、何故故に小説家がここまで細部に渡る研究の日常や研究者心理を描写できるのか不思議でたまらなかったです。
実は、想像で描いたのではなく、実際に現在も活躍している独立行政法人海洋研究開発機構のスタッフさんに取材を行っていたことが謝辞でわかり納得。
著者本人がこちらでお勤めしていると聞いても不思議に思いません。
にしても、ここまで心理描写を書けるものなのかとプロの小説家さんの実力に恐れおののきました。
畑違いの分野でありながら、ごく身近に感じながら読み進められたのは、朱野のマジックといっても過言ではないでしょう。
フィクションということですが、事実は小説よりえなり、あ、間違った。
いや、すげー事実以上にノンフィクションな展開だったのですが。。。
んとね、朱野さんが身銭を切ってわざわざモーリタニアまで郵送してくださったのは、きっと私もバッタに人生を惑わされ、主人公に少し似た生き様を送ってたのにバッタがいなくて研究できずに凹んでいたので励ましたくなったのでは、と勝手に解釈しています。
この場を借りて御礼申し上げます。
ネタバレしてしまうのですが、どうしても心に響いた一節があります。
「君たちには夢がありますか。そのためだったら、どんなに頑張ってもいいと思えるような、そのことを考えるだけで毎日がきらきらと輝いて見えるような、そんな夢が」
私は声を大にして「あります」と答えます。
たとえ、いい年こいて無給になったとしても叶えたい夢があります。
これからの一年間はこの言葉に大いに励ましてもらうことになるでしょう。
お世話になりっぱなしです。何か御礼をしたいところです。
この本にたずさわった方々は誰しもが海の底に行きたいと思っていることでしょう。
そこで、その夢を叶えることにしました。
サハラ砂漠には白い砂漠があります。