最近は朝の8時にティジャニがパンを買ってきてくれて一緒に食べ、
昼飯か夜飯をティジャニに奢る生活を送っている。
(ティジャニの奥さんは遠い街で別居中なのでフリーらしい。)
平和な毎日を送っていたら、とある朝、ティジャニがフランスパン片手に血相を変えて何やら訴えかけてきた。
トラックの絵を描き、しきりに
「ティジャニ、コータロー。コータロー、ティジャニ」
と唱える。
なんとなく分かったけど、正確に事を伝えたかったらしくその夜はティジャニの家で英語ができるモハメッドを呼び、緊急ミーティングをすることに。
モハメッドによると、
「研究所の上層部がティジャニをトラックの運転手にしようとしているんだけど、ティジャニはコータローのドライバーをしていたいんだよ。ボスとしてではなく友人として一緒に仕事がしたいんだよ。ティジャニの友人として、上層部からドライバーを誰にするか聞かれたら是非ともティジャニを選んで欲しい。」
と。
これは嬉しい。自分のドライバーをしたいだなんて光栄だし、ティジャニは気がいいので是非ともこれからも自分を助けて欲しい旨伝えてもらった。
次の日、上層部の人からドライバーの人選を聞かれティジャニを推したところ、無事にティジャニが自分の専属ドライバーとしてやっていくことに。
ティジャニはよっぽど嬉しかったみたいだった。
んで、次の日、ティジャニが何か持ってきた。
「これをコータローに友達としてプレセントするよ。これでコータローもモーリタニアンだ」
的なことを言い、モーリタニアの民族衣装をくれた。
(その様はまるで、さちこ小林)
これは「ダラー」と呼ばれる男子専用の民族衣装だ。
ネタで欲しいなと思っていたのだが、思わぬプレゼントですげー嬉しかった。
どこかに出かけるときは、ダラーを着ることが多くなった。
こないだ、研究所で大きい会議が開かれる時に満を持してダラーを身にまとい皆にお披露目したら、外人がダラー着ているのを初めて見たらしく、みんな大喜び。
所長さんは、
「ステキすぎだぞ!ダラー着たら、最高のカモフラージュになって、誰もコータローを日本人だと思わないぞ。もうすっかりモーリタニアンだな」
と。
World bankのお偉いさんであるブラヒムさんは、
「チミチミ、ミドルネームはあるかね?なぬ、ないとな。よし、それではこれからモーリタニアで最高敬意のあるミドルネーム「OULD」を名乗るがよい」
とお許しを頂戴し、名前までモーリタニア化をうながされた。
ティジャニの気の使い方はなんてナイスな。
ダラーを着て街を歩くと、みんながすごい喜んでくれて、知らないおっさん達から握手を求められる。
(女子からは未だに・・・)。
ちょっとしたパンダ気分に浸れる。
自分もティジャニとはワーカーとしてではなく、友人として接している。
会議なんかがあるときは基本的にティジャニはお外で待つことになるのだが、昼食会が行われるときは、ティジャニの分の昼飯を会場からパクって届けたりすると、その夜はティジャニのお母さんが作ってくれたアフリカ料理をお礼に持ってきてくれたりとすごく気が利く。
共通言語が無いのだが、これはもう友達といってよいでしょう。
今日は休日だったのだが、ティジャニの家でお昼をごちそうになってきた。
(ちなみにダラーはまくってティジャニのように全てを肩にかけて着るようだが、
自分はサイヤ人の戦闘服のように着こなしている。ここらへんのアレンジの仕方がファッションリーダーとしてのセンス丸出しで、他と一線を画くところだ。)
これは「チェブヤン」と呼ばれる、野菜とヤギ肉を炒めたものを、炒めた米の上にon the riceしたアフリカの家庭料理。
母さんは自分にアフリカ料理を全て食べさせようとはりきっているみたいだ。
なんか、小学生のときに近所の家でお昼をごちそうになってたことを思い出す。
ティジャニん家は「ガザラ」と呼ばれる政府に住むことを認められていない地域にある。
いわゆるスラム街だとモハメッドが言っていた。
FBIもこの地域に人が住んでいるとは思っていないそうな。
実際には、めっちゃ人が住んでいるのだけど。
電線は地中に埋めており、電気はあるのだが、水道がないためこのようなタンクに水をタンクローリから買って、貯蓄して使うそうな。
お金が無い人たちは地下水を汲んで使う。
汲んだ水は、ドラム缶に入れて、on the ロバ。
飲むのは危険らしいが、お金がないからどうしようもないらしい。
ロバも重労働で気の毒だ。
この水問題はモーリタニアが抱える一つの深刻な問題だ。
どうか、人々に安心して飲める水を・・・
エビアーン