ティジャニ

ティジャニには嫁が二人いる。
最初の嫁は「ファットマン」で、遠い街で別居中。
二人目は「マリアン」。彼女も遠い街で別居中。

こちらでは別居するのは当たり前みたいで、結婚しても嫁は自分の村にいるらしい。
マリアンは結婚したばかりで、一日中ティジャニに電話をかけてくる。
悪いことしてないかチェックしてるみたいだ。

マリアンだけ着信音を変えてるので、電話がかかってくるたびに、

「マリア〜ン」

とからかうと、嬉しそうに

「オーゥ マリア〜ン♪」
と携帯にキスしてから電話に出る。



携帯の充電が切れてしばらく電話に出れなかった時は、

「アワワワ ドンジャラス! トゥー トゥー ドンジャラス(デンジャラス的なニュアンスとみた)」
と青くなる。

「コータロー ちょっと電話に出て、ティジャニと一緒にいるの証明して」
とお願いされて、マリアンに説明することがしばしば。
説明といっても、

「ティジャニ、 アベック、コータロー」
というものなのだけど・・・


先日、ティジャニの家に遊びに行ったときは、
マリアンの写真を小一時間ばかり見せられた。
それはもう嬉しそうに。
人様の嫁に興味は無いのだが、全ての写真に対して驚きとうらやましさを滲ませ、賞賛した。




そんなマリアンがティジャニのもとに久しぶりにやってくることに。
800kmの道のりを小さな車に7人乗って今朝着いたらしい。

ティジャニは寝れなかったらしく、クマをつくってやってきた。


マリアンは本当にコータローという人物がいるのか疑っており、
明日、研究所に連れてきて証明したいと言っていた。


バッタの餌用に小麦を育てているのだが、マリアンは小麦を育てるスペシャリストだから、
こちらに滞在してる間は、任せてくれと言われており、
マリアンも研究所に来て一緒にバッタ研究を助けてくれることになっている。


自分達がフィールド調査に行ってる間もバッタ達に餌をあげてくれるそうで、
大助かり。

「マリアンがいるときは、もうレストランに用事はないぞ。マリアンがうちらの料理を作ってくれるからな」
と、家族ぐるみのお付き合いに。


フランス語ができない自分がなんでティジャニとコミュニケーションとれているかと言うと、
筆談、共通の単語、ジェスチャーを駆使しているからだ。


(4日分の筆談が記された紙)


・今日のランチは何が食べたいか、
・今日の会議のスケジュール、
・過去10年間のバッタの発生状況、
・一年を通していつバッタの数が多いか、
・自分の将来設計について、
・銀行口座がまだ開けないのはなぜか、
・モハメッドむかつくんですけど・・・

といったことが記されており、あとは、ティジャニの心の内側が描かれている。



ティジャニは絵がウマいので助かる。