宴: 夜の部


準備を見守るために会議は初日だけ参加して他の日程は欠席した。
(↑ほぼ手伝ってない)




明るすぎず、暗すぎず、すごく暖かい光に包まれた宴の準備が整った。






会議を終えた各国の所長達を入り口でお出迎え。



自分を見つけると各国の所長が、

「おー ゥルドMaeno」
と手を合わせ深々と頭を下げ、拝んでくる。

どうした?会議サボった間に何が起きたんだ?
まったく自分の立ち位置がわからない。
さては、うちの所長が何か言ったな・・・・




料理の準備が整うまでしばしリラックスして、みんなで記念撮影。



闘いを忘れ、しばしの平和を目いっぱい楽しむ。



「オイオイ、こんなに密集したらまるで大発生時のバッタみたいぢゃないか」

とバッタジョークも飛び出す。


自分はとくに年が近いということもあり、
アルジェリアの(右隣)とセネガルの(左隣)と仲良くなった。



まったりとジュースを飲みながら。
酒がない。酒がない。酒がない。



料理がなかなか登場しないので、
所長のババさんが皆が手持ち無沙汰なのを気にし、


コウタロー ちょっと空手の型披露してくれないか?」


と要請を受ける。


18年ぶりの型に自信は無いもののホストとして盛り上げなければならないので
「OK」
と答えるやいなや、


「うぉーい!みんなー アテンションプリーズコウタローが空手やるぞー 」


大声で宣伝し、一気に静寂に包まれるテント。


サムライ魂見せてくれるわ!



民族衣装を脱ぎ捨て、精神統一し、

剛柔流・型「最波」を演舞した。



(見本を紹介しますが、決してこのようにキレてないので。)





しょぼい型で申し訳なかったのだが、もうみんな大喜びで拍手喝采

「オレもやりたい!ちょっとこっちきて教えてくれ」



と、そっから一気に空手教室が始まった。
みんなで正拳突きを繰り出す異様な光景に・・・(笑)



世界最高サバクトビバッタ責任者のタミンさんもノリよく空手やりはじめ、
正拳突きを指導する。





みんな大喜びで、いたるところで組み手が始まる。
体格がいいのでリアルに危険だ。



「空手はしばしば兵器となるが、自分の空手は破壊を目的としてなくて、美を追求したもので、精神統一にいいんです」

と、それっぽく教えておいた。




空手はみんな知ってるけど見るのは初めてだったのでウケが良かった。

「芸は身を助ける」とはこのことだったのね。
従兄弟が空手道場開いててほんと良かった。

タミンさんはテニスが趣味らしく、自分もテニス大好きなので、
今度一緒にやることに。




タミンさんから、




「よし、コウタローはアフリカバッタファミリーの空手の師範に就任してもらい、
みんなでオリンピックを目指そう




という申し出があり、各々自主錬することに。

みんながバッタ防除を忘れて本気で空手やりはじめたら一大事になってしまう。。。
純粋なだけにちょっと心配


そして、モーリタニア代表になったらどうしよう・・・



そして料理登場。


メインディッシュは子ヤギの丸焼き。
「黒ヒゲ危機一髪」の樽並みにナイフが刺さりまくっていた。




もち、手づかみ。



一列になって食べる。



腹の中からは仕込んでいた米が登場。

芸が細かい。





とりあえず、みんな食べるのが早い。ものすごい勢いで食べ終える。
けっきょく自分1人だけ最後まで食べていたので、



意地汚いと思われるのがイヤだったので


「日本では、急いで食べると親に怒られるのでゆっくり食べます」
と説明すると、



「アフリカでは、ゆっくり食べると親に病気だと思われるので急いで食べます」
と返された。

分化の違いですね。



せっかくリアルバッタ研究者が勢ぞろいしているので教えを乞うた。

自分の滞在期間は2年と短く、自分で全て考えて研究するのもいいが、どうせなら役に立つような研究もしたいし、
現場の人間が感じている「穴」や「必要性」を教えてもらって、それを考慮して研究するのもありだと思っていたので、
アフリカバッタ責任者のNo.2のレミンさんに、アフリカでは今どんな研究が必要とされているのか聞いてみた。



アフリカでは学位取得者による研究はほとんど行われていない。
その理由として、海外で学位を取得して自国に帰るとすぐに偉くなってしまいマネージメントの方をしないといけないかららしい。

レミンさんも学位を取得し、研究からは足を洗ってマネージメントをしているのだが、いくつもの現場を見てきているので、重要なポイントを押さえており、かつ学術的にインパクトの高いアドバイスを頂戴した。



意外にも自分のように外国から学位取得者が西アフリカに2年も滞在し、野外調査するのは初めてだそうだ。

たまに短期的には来ていたらしいが、怪しいデータとっていくだけで、不満を隠せてなかった。

こちらに来る前に綿密な研究計画を練ってきたのだが、
モーリタニアだけでなく、アフリカ各国のバッタ防除システムを改善するような研究にするにはどうしたらいいのか、考え直す必要がありそうだ。



「Ould Maenoが真実を明らかにしてくれ。ここにいる皆がそう願っている」


とアフリカの未来を託された。


自分が必要とされているのが嬉しいし、何よりやりごたえたっぷりでやる気が湧く。



そして、各国の所長達がやたら仲いいし、すごくフレンドリーに接してくれるので、なぜそんなに仲良しなのか聞いたら、

「うちらは家族なんだよ。バッタという同じ問題に立ち向かっていて助け合い、協力しあっているから親密なんだよ。」

と、教えてもらった。


情報を隠すようなことはせず、皆オープンに助け合っているそうだ。


「ちょっとー オマエの国からやたらバッタ飛んできて困るんだけど・・・」

「知らねーよ。証拠ねーくせにいちゃもんつけてくんぢゃねーよ」

的なバッタならではの喧嘩があると思っていたので、すごくいい関係を築けているようだ。



宴もたけなわ。

帰り際に、
「どうぞ、あなたの奥様に」
と、日本からお土産として持ってきていた「ピューラー」をみんなにプレゼントした。
(留学生からお土産としてかなり喜ばれると聞いており、ダイソーで買い占めていた)


基本的にバッタには強いが奥様には皆弱いみたいだ。
ほとんどの人がなんに使うものか分かっていなかったので、写真付きのやつで助かった。




セネガルのが、

「オイオイ!なんでオレがずっとコレを欲しがってたの知ってんだよ?すげー嬉しい」


と。うまい返しだなぁ。 
皆に後日写真を送ることに。

別れ際にみんなにいつでも遊びにきてくれと誘ってもらった。
いずれ行ってみたいッス。
一気に研究範囲が広がった。

壮大な宴でとても楽しかったし、モーリタニアに来て早々に皆と仲良くなれて良かった。