別れ
君は毎日、毎日、僕のことを支えてくれた。
君がいたから、僕は笑えたし、
君がいたから、僕は楽しかった。
今日、君は天命を全うし、僕を残して永い旅へといってしまった。
日増しに衰えていく君の姿を僕がどんな想いで見ていたのか知っているかい?
力尽き、見るも無残な姿に変わり果てたというのに、
それでも、君は精いっぱい立っていた。
君は、最後の一滴まで絞り出して、
僕に元気を与えてくれた。
毎日、毎日疲れただろう。
せめて、安らかに休んで下さい。
今までありがとう。そして、さようなら・・・
クリアクリーンへ。
ハカセより。
あのね。歯磨き粉が切れちゃった。
以前に歯磨きする時はマッチ棒の先ほどの歯磨き粉があれば十分という話を聞いて、一日に2,3回歯磨きしてたら10か月もワンチューブでもちました。
なんかさ、ずっと一緒にアフリカンライフを闘ってきたから別れをつげるのが寂しくてさ。
歯磨きは自分にとって特別な行為です。
特に愛用のクリアクリーンには思い入れがあります。
そう、あれは弘前での大学時代のことだった。
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夜、学食前の電話ボックスをふとみると財布が忘れられていた。
ちょっと失礼して中身を見たら、一学年上の女子学生のものだった。
面識はなかった。
携帯番号が書かれたのが紙だったかカードだったか忘れたけど、見つけたので電話をかけたら失くして困っていたところだったそうだ。
明日、電話ボックスの前で会う約束をして、その日は眠りについた。
翌日、彼女に会うために身支度を整え、
仕上げに歯を磨こうと、いつもより多めにクリアクリーンを歯ブラシにつけようとした時、
ピンッ
「ぐはぁっ」
しなった歯ブラシの毛先がクリアクリーンを吹き飛ばし、あろうことか左目に直撃した。
慌てて水道水と目薬で洗い流そうにもまったくとれない。
はっきり言うけど、痛かった。
もう涙が止まらなかった。
それもそのはず、歯磨き粉には歯の表面を磨くための研磨剤が含まれている。
瞬きする度に激痛が走る。
もう待ち合わせの時間が差し迫っていた。
しかたなく、熱い涙を頬に伝わらせたまま、電話ボックスの前に。
学生証で顔を見ていたので、どれが彼女かすぐにわかった。
「あのー、これ」
と財布を手渡し、彼女は御礼を言いながら、私が泣いているのに驚いていた。
泣くくらい財布を返したくないと思われたのかもしれない。
事情を説明し、目のことを心配してくれた。
自分はすぐに眼科に行き、医者に笑われながら眼を洗浄してもらいようやく涙が止まった。
治療費、2750円。
財布を拾っていいことをしたと思いきや、痛い目に会う始末。
世の中って切ないなぁと遠くの空を眺めていたら、
電話がかかってきた。
さっきの女学生が御礼をしたいから一緒に飲みに行こうとのこと。
世の中やるじゃん!
あの日以来、歯ブラシに歯磨き粉をつける瞬間、極度に緊張するようになりました。